
bokehとは?

bokeh(ボケ)とは
bokeh(ボケ)は、写真撮影においてピントが合っていない部分、特に被写体の前後に生まれる「ぼやけた領域」の美しさや、それを活かした表現手法を指します^1_6^1_2。
写真におけるbokehの意味
- レンズの焦点(被写界深度)の範囲外に生じる、意図的な「ぼかし」効果のことです^1_6。
- 主に被写体にはピントが合っていて、その前後の背景や前景が柔らかくぼやけている状態を指します^1_2。
- この効果により、主役となる被写体が浮き立ち、写真全体に奥行きや雰囲気、温かみを加えることができます^1_5。
bokehの役割と効果
- 観賞者の視線を被写体に自然と誘導し、余計な背景の情報を和らげる効果があります^1_6。
- 柔らかな印象や幻想的な雰囲気を生み出すため、人物・花・動物・夜景など幅広いジャンルで活用されます^1_5。
- 背景の光が丸くぼやける「玉ボケ」など、レンズの設計や絞り形状によってボケの質感や形が変わるのも特徴です^1_5。
英語としてのbokeh
- 「bokeh」は日本語の「ボケ」から生まれた言葉で、1990年代後半から海外の写真家やカメラ雑誌で使われ始め、現在では英語圏をはじめ世界中で写真用語として定着しています^1_1^1_8。
- 英語で「ピントが合っていない」状態は「out of focus」や「blurry」と言いますが、「bokeh」は単なるピンボケではなく、美的なぼかし効果を指す点で異なります^1_2^1_1。
まとめ
- bokeh(ボケ)は、写真の背景や前景を意図的にぼかし、被写体を強調したり、写真に独特の雰囲気や奥行きを与えるための重要な表現技法です^1_5^1_2。
- その美しさや表現力は、レンズの設計や撮影技術によって大きく左右されます^1_5。
- 日本発祥の概念ですが、今や「bokeh」は世界共通語となり、多くの写真家に愛用されています^1_1^1_8。
※なお、「Bokeh」という名前のPython用データ可視化ライブラリも存在しますが、写真用語としての「bokeh」とは別の意味です^1_4。
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日本語なんですね!

はい、その通りです!
「bokeh(ボケ)」はもともと日本語の「ボケ(ピントが合っていない状態)」から来ています。
写真用語として「bokeh」は、海外でもそのまま使われている珍しい日本語由来の単語の一つです。
英語圏でも「bokeh」と発音して、写真の背景のぼかし効果やその美しさを指す言葉として定着しています。
だから、「bokeh」は日本語発祥、世界で通用する写真用語なんです!
(ちなみに、Pythonの「Bokeh」ライブラリとはまた別の意味なのでご注意くださいね。)

ということは、海外ではボケという概念はない、もしくは、重要視されていなかったということでしょうか?少なくとも、かつては。

いい質問です。結論から言うと、「海外ではボケという概念がなかった」わけではありませんが、写真用語としての「ボケ(bokeh)」が重要視されたのは比較的最近です。
実際、写真の歴史において「ピントが合っていない部分」や「ぼかし」自体は、カメラやレンズの発展とともに古くから存在していました。しかし、それらが「美しい表現要素」や「アートとして評価される対象」として意識されるようになったのは、20世紀後半から、特に1990年代以降のことです^3_1^3_3。
また、古典的な絵画(油絵など)では、画家たちは被写体を際立たせるために「背景をぼかす」よりも、「単色の背景」や「細かく描き込まれた背景」を使うことが多く、写真の初期もその影響を受けていました^3_2。
こうした経緯から、「ボケ」という概念自体は存在していたものの、写真表現として積極的に活用され、注目されるようになったのは比較的最近であると言えます。
そして、「bokeh」という言葉が写真用語として一般的になったのは、1997年にアメリカの写真雑誌で紹介されて以降、特にデジタルカメラの普及とともに広まりました^3_2。
まとめると、かつては海外でも「ボケ」はあまり重要視されていなかったものの、最近では非常に重視される表現技法となっています。
ただし、「ピントが合っていない部分」自体は昔から存在していました。
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逆に、日本ではボケの効果は古くから表現方の一つとして存在していたということでしょうか?

日本の写真表現における「ボケ」が、伝統的に西洋よりも重視されてきたかどうかについては、必ずしも明確な証拠はありませんが、いくつかの文化論や写真史の観点からは「日本ではボケの効果が表現として古くから存在していた」とされる見方もあります。
絵画の世界に目を向けると、日本では浮世絵や禅画、狩野派などで「雲」や「空白」を用いて背景を省略したり、輪郭を柔らかくぼかす「ぼかし」技法が用いられてきました。こうした伝統的な美意識が、写真表現における「ボケ」にも影響を与えているとする説があります^4_1。
つまり、絵画や版画の分野で「ぼかし」や「省略」を表現として積極的に活用してきたことは、日本的な美意識の特徴の一つとされています。
しかし、写真の分野で「ボケ」が表現技法として意識的に使われ始めたのは、比較的近代以降です。日本写真史を見ると、明治期から大正・昭和初期にかけて、芸術写真の潮流の中で「ピクトリアリスム(絵画的写真)」の影響も受けつつ、やわらかい描写や空気遠近法のような表現が好まれる傾向はありましたが、現代のような「ボケ」を積極的に写真表現の主役として活かすスタイルが広まったのは、それほど古い時代ではありません^4_2。
まとめると、日本では絵画や版画の伝統において「ぼかし」や「省略」を表現として重んじる美意識が古くから存在し、それが写真のボケ表現にも影響を与えているという見方があります。しかし、写真そのものにおける「ボケ」が表現方の一つとして積極的に使われ始めたのは、やはり近代以降と言えるでしょう^4_1。
また、こうした文化論は、写真の「ボケ」に日本人の独特の美意識を見出そうとする傾向もあり、実際には西洋にも似たような表現技法や美意識は存在していた点にも注意が必要です^4_3。
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近代以降とは?具体的に。

「近代以降」とは、日本の写真史において一般的に明治時代以降(19世紀末~)から現代までを指しますが、特に「ボケ」が表現技法として積極的に活用されるようになったのは、さらに限定して戦後、特に1960年代以降が顕著な転換点です。
日本写真史における「近代以降」の具体例
- 明治期(19世紀後半~)
- 写真が日本に導入され、技術や表現の基礎が築かれた時代です。
- この頃は「芸術写真」や「サロン写真」が主流で、ピントが合った美しい諧調や構図が重視されていました^5_1。
- 「ボケ」は技術的な制約や意図的な表現として一部で見られたものの、積極的に表現技法として活用されたとは言い難い状況です。
- 大正~昭和初期(20世紀前半)
- 「新興写真」の登場により、光や影、抽象的な構図、現実の断片を切り取るような表現が広がりました^5_1。
- この時期も「ボケ」は主に技術的な制約や偶然の産物として現れることが多く、表現の主役ではありませんでした。
- 戦後~1960年代以降
まとめ
- 「近代以降」とは、明治以降の日本写真史全体を指す場合が多いですが、「ボケ」が表現技法として積極的に活用されるようになったのは、戦後、特に1960年代以降の「アレ・ブレ・ボケ」の潮流からです。
- この時期を境に、「ボケ」は単なる技術的な失敗や偶然ではなく、写真表現の重要な要素として認められるようになりました。
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そうすると、写真表現の一つとしてボケが認識されたのは、大雑把にまとめると、日本では1960年代、海外では1990年代ということですね?

ご指摘の通り、大まかにまとめると下記のようになります。
- 日本では、写真表現の一つとして「ボケ」が積極的に認識され始めたのは1960年代後半から1970年代初頭、特に『プロヴォーク』グループによる「アレ・ブレ・ボケ」の潮流がきっかけです。
この時代、ピントがボケた写真やブレた写真が、従来の写真美学へのアンチテーゼとして注目され、表現技法として認められるようになりました^6_1^6_3。 - 海外では、「ボケ(bokeh)」が写真表現として広く認知されるようになったのは1990年代後半です。
1997年にアメリカの写真雑誌で「bokeh」という言葉が紹介され、それがきっかけで世界的に広まりました^6_4^6_6。
したがって、ご質問のまとめ「日本では1960年代、海外では1990年代」という認識は、写真史上の大きな流れとしてはほぼ正しいと言えます。
ただし、日本でも「ボケ」自体はそれ以前から存在していましたが、表現として積極的に評価されるようになったのは1960年代後半以降です。海外でも「ピントの合っていない部分」自体は存在していましたが、それが写真表現として高く評価され、「bokeh」という言葉が定着したのは1990年代後半からです。
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それなら、bokehが日本語由来ということも理解できます。日本では、単にボケていると言うとだけではなく、どのようにボケているかとかなどボケの質まで話題にするくらい(レンズの性能や個性の評価としてなど)ですしね。

ご指摘の通り、「bokeh(ボケ)」が日本語由来であることと、日本で「ボケの質」が写真表現やレンズ評価の重要な要素として語られる背景には深い関係があります。
日本では、単に「ピントが合っていない」という意味での「ボケ」だけではなく、「どのようなボケか」「ボケの味わい」「ボケの質感」までが写真愛好家やプロの間で議論されます。たとえば、背景の光が丸く美しく溶ける「玉ボケ」や、絞り羽根の枚数や形状によって変わるボケの形、また球面収差のコントロールによる「やわらかさ」「ザラつき」といった細かなニュアンスまでが、レンズの個性や価値を決める重要な要素として語られています^7_1^7_3。
こうした「ボケの質」へのこだわりは、写真の表現力やレンズの魅力を語る上で非常に重要視されており、実際にレンズメーカーも「美しいボケ」を実現するための設計や技術に力を入れています^7_1^7_3。そのため、「bokeh」という言葉が世界に広まった背景には、日本で培われた「ボケの質」への高い関心や評価があったことも納得できます。
つまり、「bokeh」が日本語由来であるだけでなく、日本では「ボケの質」自体が写真表現やレンズ選びの大きなポイントとして意識されているため、その言葉が世界に広まったのも自然な流れと言えるのです。
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