
天気予報では、よく「平年と比べて」とか「平年並み」のように「平年」という言葉が出てきます。この平年とは何でしょうか?


気温、降水量、湿度、積雪量、真夏日の日数、桜の開花日、台風の発生数など、まだまだたくさんありますよね。天気予報で使われる「平年」はすべて同じ基準ですか?

天気予報で使われる「平年」は、基本的に同じ基準で計算されています。具体的には、過去30年間の観測値を平均したものが「平年値」とされ、10年ごとに更新されます123。この基準は、気温、降水量、湿度、積雪量、真夏日の日数、桜の開花日、台風の発生数など、多岐にわたる気象要素に適用されます13。
ただし、「平年並み」という表現は、観測値と平年値との差を考慮して決められます。例えば、気温の場合、平年値との差が一定の範囲内であれば「平年並み」とされます23。この範囲は、平年の30年間のデータを順番に並べた際の11位から20位の範囲に相当します34。
したがって、異なる気象要素でも同じ30年間の平均値を基準としているため、基本的には同じ基準で評価されますが、「平年並み」の具体的な範囲は要素によって異なる場合があります。

「平年並み」はどの範囲ですか?例えば、±1σとか?

「平年並み」という表現は、具体的な範囲(例えば±1σ)を示すものではありません。一般的に、「平年並み」とは、観測値が平年値と比較して一定の範囲内にあることを指します。この範囲は、平年の30年間のデータを順番に並べた際の11位から20位の範囲に相当します。
標準偏差(σ)を用いた範囲(例えば±1σ)を「平年並み」として定義することは、データが正規分布に従う場合にのみ有効です。正規分布では、平均値±1σの範囲には約68%のデータが含まれます123。しかし、「平年並み」の定義は、必ずしも標準偏差に基づくものではなく、観測データの順位や分布形状によって異なる場合があります。
したがって、「平年並み」は、具体的な標準偏差の範囲(±1σなど)ではなく、観測データの相対的な位置を示す表現として使われています。

「この範囲は、平年の30年間のデータを順番に並べた際の11位から20位の範囲に相当します」とのことですが、これは気温、降水量、湿度、積雪量、真夏日の日数、桜の開花日、台風の発生数などすべて同じ考えかたですか?

「平年並み」の範囲は、平年の30年間のデータを順番に並べた際の11位から20位の範囲に相当しますが、これは主に気温や降水量などの連続的なデータに適用される考え方です。具体的には、気温や降水量の場合、平年値との差を小さいものから大きいものへと並べ、1~10番を「低い」、11~20番を「平年並み」、21~30番を「高い」とする方法が一般的です127。
一方、真夏日の日数や台風の発生数、桜の開花日などの非連続的データや、特定のイベントの発生日数については、同じ方法が適用されるかどうかは明確ではありません。例えば、真夏日の日数や台風の発生数は、通常の階級区分で評価されることが多いですが、具体的な範囲設定は異なる場合があります。
また、桜の開花日などの特定のイベントの発生日については、通常の階級区分ではなく、平均値からの偏差や分布形状に基づく評価が行われることがあります。したがって、「平年並み」の範囲は、データの性質や観測対象によって異なる場合があります。

では、真夏日の日数や台風の発生数、桜の開花日などでは、「平年と比べて~」と表現されても科学的な意味はないのですね。なんとなくそんな感じのようなふわっとしたというか。

「真夏日の日数や台風の発生数、桜の開花日」などの非連続的データや特定のイベントについて、「平年と比べて~」と表現される場合、科学的な厳密さを持つものではありませんが、一定の基準に基づいています。これらのデータは、過去30年間の平均値を基にした平年値を用いて比較されます。
ただし、これらのデータは年ごとに大きく変動することが多く、平年値との差が大きい場合もあります。例えば、真夏日の日数は、地球温暖化や都市化の影響で増加傾向にあります25。台風の発生数も、気候変動の影響を受けることがありますが、年ごとの変動が大きいため、平年値との比較は一定の意味を持つものではありません。
桜の開花日についても、気温や気候条件によって大きく変動するため、科学的な厳密さを持つものではありません。したがって、これらのデータについての「平年と比べて~」という表現は、ある程度の基準に基づいていますが、必ずしも厳密な科学的意味を持つわけではありません。

平年値の更新がなぜ10年ごとなのかもっと詳しく教えて下さい。直近の情報を反映しないと、更新のたびに大きなギャップが生じる可能性があるでしょう?移動平均のような方が適切ではありませんか?

「平年値」が10年ごとに更新される理由は、気候変動が急速に進む中で、より新しい情報を反映する必要性が高まったためです。以前は30年ごとに更新されていましたが、世界気象機関(WMO)は2015年に規則を変更し、10年ごとに更新することを決定しました12。
この変更は、地球の気候変化が速くなり、水管理や農業などの気候に左右されやすい部門では、古いデータでは判断の根拠として不十分とされたためです1。10年ごとの更新により、より直近の情報を反映し、実務での利用に適した基準を提供することを目指しています。
ただし、10年ごとに更新すると、基準が頻繁に変わるため、長期的な比較が難しくなる可能性があります。また、直近10年間のデータのみを用いると、極端な年の値が入った場合に平均が大きく影響を受ける可能性があります12。
移動平均を使用する方法もありますが、実際には日別平滑平年値の算出に移動平均が使われています。しかし、平年値全体に移動平均を適用することは、長期的な基準としての安定性を保つためには適していないと考えられています。
WMOは長期比較用の基準も維持しており、1961年から1990年の平均を長期的な気候変動の評価のための基準として維持しています12。これにより、短期的な変化を反映しつつも、長期的な傾向を評価することが可能です。

以前は30年だったのですか。それは論外ですね。今のようにダイナミックな変化を考えると、10年でも長すぎのように思います。
「10年ごとに更新すると、基準が頻繁に変わる」とおっしゃいますが、それは比較を一つにしようとするからです。
100年移動平均、30年移動平均、10年移動平均、5年移動平均のように複数の比較指標を設ければよいでしょう?

「平年値」が10年ごとに更新される理由は、気候変動が急速に進む中で、より新しい情報を反映する必要性が高まったためです。以前は30年ごとに更新されていましたが、世界気象機関(WMO)は2015年に規則を変更し、10年ごとに更新することを新たな世界基準として導入しました13。
ただし、10年ごとに更新すると基準が頻繁に変わるため、長期的な比較が難しくなる可能性があります。さらに、直近10年間のデータのみを用いると、極端な年の値が入った場合に平均が大きく影響を受ける可能性があります。
あなたの提案のように、100年移動平均、30年移動平均、10年移動平均、5年移動平均など、複数の比較指標を設けることで、異なる時間スケールでの変化を捉えることが可能です。これにより、短期的な変動と長期的な傾向を同時に評価できるようになります。ただし、短い期間の移動平均はデータの安定性や統計的有意性を保つため、注意が必要です。
実際には、日別平滑平年値の算出に移動平均(KZフィルタ)が使われていますが、これは日々の変動を平滑化するために行われています46。平年値全体に移動平均を適用することは、長期的な基準としての安定性を保つためには適していないと考えられています。

実際のところ、複数の時間スケールを用いた研究はないのでしょうか?

実際には、複数の時間スケールを用いた研究は存在します。例えば、気候変動の予測や分析において、異なる時間スケールでの変動を考慮することが一般的です。
- 長期スケールの気候変動: 過去数万年間の気候変動を解析する研究があります。例えば、南極ドームふじのアイスコアを用いた研究では、過去72万年間の気温とダストの変動を調べました。
- 中期スケールの予測: 十年規模の気候変動予測も行われています。例えば、大気海洋結合モデルを用いて、数年から10年先の気候状態を予測する研究が進められています12。
- 短期スケールの分析: 日、月、年の複数タイムスケールで気象条件の影響を分析する研究もあります。例えば、湖沼の水質変動を複数の時間スケールで解析する研究があります45。
- 複数スケールでのデータ利用: 気候情報の創出において、異なる時間スケールに対応したデータを用いる研究も行われています。例えば、任意の空間・時間スケールに対応したアンサンブル気候情報を用いて、低頻度極端現象の分析を行う研究があります。
これらの研究は、異なる時間スケールでの気候変動や気象現象を理解し、将来の予測や適応策の策定に役立てています。
Citations:
- https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2016/index4.html
- https://www.mri-jma.go.jp/Research/project/M/M_2019-2023_2.html
- https://metsoc.jp/tenki/pdf/2010/2010_04_0005.pdf
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejer/74/5/74_I_133/_pdf
- https://cir.nii.ac.jp/crid/1390564238078991104
- https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/kisetutext/26/chapter2.pdf
- https://www.maff.go.jp/j/budget/yosan_kansi/sikkou/tokutei_keihi/R1itaku/R1ippan/attach/pdf/index-7.pdf
- https://soil.en.a.u-tokyo.ac.jp/jsidre/search/PDFs/13/13S10-05.pdf
Perplexity の Eliot より: pplx.ai/share