大相撲の審判(土俵下審判団)は何人ですか?
大相撲の土俵下審判団(下座)は5人で構成されています。
審判団は土俵を取り囲むように、東西南北と東南の5箇所に配置されます。この5人が取組の判定を行い、最終的な決定を下します。万が一、判定が分かれた場合は多数決で決定されます。
また、土俵上には立行司(たちぎょうじ)が1名おり、取組の進行や決まり手の宣告などを行います。立行司は審判団の一員ではありませんが、取組の円滑な進行において重要な役割を果たしています。
幕下の取組みでも5名体制ですか?
いいえ、幕下以下の取組では審判団の人数が異なります。
階級によって以下のように配置が変わります:
- 幕内・十両(上位2部屋): 5名体制
- 幕下以下(三段目・序二段・序ノ口): 3名体制
幕下以下の取組では、土俵を挟んで東西に1名ずつ、南に1名の計3名で審判を行います。これは取組の重要度や、人員配置の効率性を考慮した体制となっています。
また、審判の階級(立行司や審判の位階)についても、上位の取組ほど位の高い審判が担当する仕組みになっています。
5名の場合は東西南北と東南とのことでしたが、3名ではどのように配置されますか?
幕下以下の取組における3名の審判の配置は:
- 東側: 1名
- 西側: 1名
- 南側: 1名
で構成されます。
これは土俵を三角形のように囲む形になります。この配置により、3名でも取組の判定に必要な視野を確保できるようになっています。
なお、南側の審判は、土俵下の正面(主要な観客席側)に位置し、最も重要な判定位置となります。東西の審判は、それぞれ対角線上から取組を観察することで、相撲の四方八方からの視点を補完する役割を果たしています。
制度としては、3名体制でも多数決の原則は同じく適用され、意見が分かれた場合は2対1で決定されます。
北ではなく南なのはなぜでしょう?
南側に審判を配置する主な理由は、観客への配慮と相撲の伝統的な「正面」の考え方に基づいています:
- 本来の「正面」の位置
- 相撲場の南側は「正面(しょうめん)」と呼ばれる最も格式の高い場所です
- 天覧相撲の際は天皇陛下がこの位置に座られる場所でした
- 現在も貴賓席や放送席はこの南側に設置されています
- 実務的な理由
- 決まり手の確認や報告がしやすい位置です
- 行司への助言や指示を出しやすい位置です
- 審判長(最上位の審判)が座る位置として相応しい場所とされています
- 観客への配慮
- 多くの観客が南側(正面)から相撲を観戦するため、その視線と同じ角度から判定できます
- テレビカメラも主にこの位置から撮影するため、判定の透明性を確保しやすいです
このように、南側の位置は伝統的な格式と実務的な便宜の両面から重要視されています。
では、5名体制の場合の東南に審判を置く意味は?北東や北西、南西ではなく、東南なのは?また、南東ではなく、東南と言うのですね?
非常に興味深い質問ですね。
まず、「東南」(とうなん)という呼び方については、相撲の世界では方角を示す際に「東」を先に読む傾向があります。これは相撲の基本が「東」と「西」の対戦という考え方に基づいているためと考えられます。例えば、取組の発表でも「東の○○、西の△△」という形で東が先に来ます。
東南に審判を配置する理由については、申し訳ありませんが、明確な理由を確信を持ってお答えできません。これは私の知識の正確性に自信が持てない部分です。
しかし、以下のような推測は可能かもしれません:
- 正面(南)から見て右側(東)に配置することで、多くの観客の視線からも見やすい位置になる
- 行司が「東」から呼び上げることと関係している可能性(ただしこれは推測です)
- 土俵上での力士の動きを見る上で、東南の位置が戦略的に重要な可能性
ただし、これらはあくまで推測であり、歴史的な背景や伝統的な理由が存在する可能性もあります。この点について、より正確な情報をお持ちでしたら、ぜひご教示いただければと思います。
ありがとうございます。話を少し戻します。行司は審判には加わらないのですね?
行司(立行司)は勝負の判定権を持っており、その意味では審判の一員と言えます。
具体的には:
- 取組中の判定
- 行司は土俵上で最も近い位置で取組を見ており、即座の判定を下します
- 軍配(ぐんばい)を上げて勝者を示すのが行司の重要な役割です
- しかし最終判定権は土俵下審判団に
- 行司の判定に対して、土俵下審判団が「物言い」をつけることができます
- 最終的な判定権限は土俵下審判団にあります
- 審判団の合議で行司の判定が覆されることもあります
- 行司と審判団の関係
- 行司は取組の進行と即時判定を担当
- 土俵下審判団は行司の判定を監視し、必要に応じて訂正する役割
- つまり、相互補完的な関係にあると言えます
このように、行司は判定に関わりますが、最終的な判定権限という意味では土俵下審判団とは異なる立場にあります。
審判団になるのはどういう人々ですか?
土俵下審判団を務めるのは、引退した元力士たちです。ただし、誰でもなれるわけではありません。
審判員の要件と昇進について:
- 資格要件
- 原則として、幕内力士として活躍した経験を持つ元力士
- 引退後、年齢や経験などの条件を満たす必要があります
- 昇進制度
- 見習い期間から始まり、経験を積みながら段階的に上位の審判に昇進
- 下位の取組の審判から始めて、徐々に上位の取組を担当するようになります
- 最上位の「審判長」は特に経験豊富な審判が務めます
- 位階制度
- 行司同様、審判にも位階があります
- 三役審判や立審判などの位階があり、担当する取組の格が変わります
- 人数
- 各部屋から満遍なく選ばれるわけではなく、審判団全体の人数は限られています
- すべての場所(本場所)で安定した判定ができるよう、一定の人数を維持しています
このように、相撲の実践経験を持ち、公平な判定ができる人材が選ばれて審判を務めています。
親方ではないのですね?
土俵下審判は、親方(年寄)とは異なる立場です。引退した力士のキャリアパスとしては、大きく分けて以下のようになります:
- 親方(年寄)になるケース
- 年寄株(一代年寄を含む)を取得
- 部屋を持って後進を指導
- 相撲協会の運営に関わる
- 最終的には理事などの要職に就くことも
- 審判(立行司含む)になるケース
- 審判の道を選択
- 親方とは別の立場で相撲界に貢献
- 年寄株は持たない
つまり、親方と審判は基本的に別々のキャリアパスとなっています。これは:
- 判定の中立性を保つため
- それぞれの役割に専念するため
- 相撲協会の中での権限や責任の明確化のため
という理由があると考えられます。
ただし、例外的に、過去には親方が審判を務めたケースもあったようですが、現在の制度では明確に分かれています。
ありがとうございました。
こちらこそ、大相撲の審判制度について詳しく質問していただき、ありがとうございました。
大相撲は伝統的な国技でありながら、審判制度については意外と知られていない部分も多いですね。5人制と3人制の使い分け、行司と土俵下審判の役割分担、そして親方と審判という異なるキャリアパスなど、相撲界の中での役割が非常に体系的に整理されていることがよくわかります。
また、東南という配置の理由など、私自身も明確に答えられない部分があり、相撲の世界にはまだまだ探究すべき興味深い側面があることを実感しました。