ぼっち登山

大学4年の夏の終わりに、高校時代からの親友Kちゃんを誘って富士登山をする計画を立てました。特にこれといった理由をあげるなら、社会人になる前の思い出つくりといったところでしょうか。出発1週間前になって、Kちゃんから電話があり、新しくできた彼氏とデートの約束が入ったから一緒には行けないと告げられました。女同士の友情はいかに脆いものなのかと悲しみに打ちひしがれながらも、たとえ一人でも必ずや登頂してやるんだという闘志に火がつきました。

登山前日は富士宮市で宿をとり、当日は朝一番の5合目行きのバスに乗るため早朝に起床しました。熱湯を魔法瓶に入れ、前日に買い出しした菓子パンとカップ麺を鞄に詰めました。富士山の5合目はすでに少し冷やりとしていました。富士宮ルートは階段のような岩を登っていく感じで、傾斜は急ですが頂上までの距離は近いです。そのため上り客で非常に混み合っていました。初富士山な上にぼっち登山でしたが、すれ違う人が皆声をかけてくれるので寂しさを紛らわすことができました。皆が杖を使っているので、私も杖を購入してみました。これをつきながら歩くと、思いの外登山が楽になりました。背後に見える駿河湾の美しいこと、このルートにして正解だったなと思いました。8合目くらいからは人も減り、体力的にも本当にきつくて、すぐ前がものすごく遠くに感じました。酸欠で苦しむ人も時折見かけましたが、ゆっくり登ってきたせいか私は平気でした。

頂上に辿り着いた時には、予定よりも1時間ほど過ぎていました。私は日帰りで計画していたので、なんとしてでも5合目から駅までの最終バスに間に合わなくてはいけません。そのため、頂上にいられる時間はわずか30分でした。頂上からハガキを出そうと思っていたのですが、頂上の郵便局はすでにシーズン終了で閉まっていました。仕方ないのでお昼にしようと、カップ麺と魔法瓶を取り出したのですが、すでに魔法瓶のお湯はぬるま湯になっていました。残る菓子パンを頬張りながら、写真を何枚か撮りました。やはりぼっち登山だと、この達成感をシェアできる相手がいないのが寂しいです。

下山は、砂だらけのその形状から下りやすいということで須走口ルートを選びました。多くの人は山小屋に泊まるのか、午後を過ぎたこのルートはあまり人を見かけなかったです。下山開始からすぐに雲行きが怪しくなり始めました。草木さえない土の斜面を、下から雲がスーッと登ってくるのが直に見えます。その恐ろしくも神々しい様は、江戸時代に流行ったという富士山信仰を思い起こさせました。雲で視界が悪い上に、人気も全く無く、このまま日が落ちたらどうしようかと不安になりながらも、ひたすら歩きました。5合目のバス停にたどり着いた時は、達成感と足の痛みで涙が滲みました。バスに揺られながら駅に向かう途中、幻のように一瞬でしたが森の中にたたずむ鹿の親子を見かけました。

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